京都日誌(433)






■7月29日、水曜日、積乱雲の晴れ。

午前中、掃除と身心調整。午後から、ニコの仕事へ。

きのうは早朝、4時に胃の痛みで目が覚めた。

睡眠中に胃が痛くなる、という経験はほとんどない。

これは、なぜか、私なりに仮説を立てた。このところ、暑いので冷たい飲み物をかなり飲み、それによって、胃が弱っていたところへ、寝る前に、冷たい野菜ジュースと、冷たい青汁を、かなり飲んだせいだろうと。

たまたま、きのうは、かかりつけのドクターのところへ行く日だったので、彼女に冷えが原因だという、私の推論について聞いてみた。

ドクターは、その可能性もあるし、そうでない可能性もあるので、痛みが続くようなら、胃の検査をした方がいいという回答だった。

つまり、複数の原因可能性があるので、日常生活の中で、経過観察をした方がいい、という意見である。

たまたま、きょう、ヨーグルトに青汁をかけて、食後に食べたところ、きのうと同じ症状が出た──胃の膨満感と、量が少なかったので、痛みまではいかないが、強い違和感など──。この違和感の質感は、きのうと同じなので、直接の原因物質は、青汁の粉末にあると、特定して間違いないだろうと判断した。

青汁は、今までも飲んでいたので、夏場の冷たい飲み物を摂取して、胃が弱っているという条件があって、初めて、青汁が、原因物質になったのだろう。

であれば、生活において、青汁と冷たい飲み物は、当面避ける、という実践的な判断が出てくる。あるいは、将来的に、そのように予知して行動するという判断になる。

これは、ささやかな、日常の一コマだが、何らかの目的を定立し、その目的を達成するための手段を、試行錯誤してゆくプロセスは、原理的には、科学の起源と同じである。


何らかの実践性に繋がる知識の生産が、科学的営みを構成する重要なモメントの一つであることは間違いないだろう。

きのう、午後4時27分に熊本で起きた、マグニチュード7.1の地震は、『アルジャジーラ』を始め、海外メディアもかなり報道している。7月28日付の『アルジャジーラ』によると、米国地質調査所(USGS)、は後に、推定マグニチュードを6.8に修正している。

地震に関する科学的知識で、最重要なのは、予知に関わる知識だろう。

南海トラフや首都圏直下などの、巨大地震については、さかんに、発生確率や被害想定が発表されているが、この令和8年熊本地震のような、あるいは、令和6年能登半島地震のような、その隙を突くような地震の予知情報は、プアーだと言われても仕方がないのではないか。

それだけ、正確な地震予知は、難しいとも言える。

2025年12月20日に、京都大学大学院情報学研究科の、梅野健教授と、小池元助教が、日本地震予知学会で、準リアルタイム相関解析システム(β版)の開発を発表した。

これは、GNSS(衛星測位)の観測データから、地震前に現れると仮定された「電離圏と地殻の広域的な同期変化」を相関解析(電離圏と地殻変化の相関解析ではなくTECどうしの空間的相関、およびPOSどうしの空間的相関)で検出する仕組みである。

このシステムは、日本全国約1300ヶ所の電子基準点から、GNSS衛星の電波を30秒ごとに受信し、その同じ電波から、次の二種類の情報を取り出す。

電離圏の全電子数(TEC)

GNSS電波が電離圏を通過すると、電子の量に応じて伝わり方が変わる。そこから、上空の電子の総量であるTECを推定する

電子基準点の位置(POS)

各観測点の東西・南北・上下方向の位置を計算し、ごく小さな地殻変動が広域的に生じていないか調べる。

GEONET電子基準点がGNSS衛星からの受信した記録を全国規模で集めて提供する仕組み)の同じGNSS基礎観測データから、電離圏のTECと電子基準点のPOSを別々に算出し、それぞれの空間的な相関異常を検出するシステムと言える。

TEC系は、上空の電離圏の変化を捉える。

POS系が、地表の電子基準点の変位、つまり地殻変動を捉える。

地震前に断層がわずかに動くならPOSに現れる可能性があり、一方、岩石の応力変化(地下の岩盤にかかっている「単位面積当たりの力」の変化:応力=力/面積)などが大気─電離圏へ影響するという仮説が正しければ、TECにも変化が現れる可能性がある。

地殻変動が必ず電離圏変動を起こすという関係は、まだ確立されていないため、最初からTECとPOSを一つの数値にまとめず、別々の現象として検証する、ということのようである。

さらに、データ解釈とノイズとの関係もある。たとえば、TECのみ異常であれば、太陽活動・通常の電離圏擾乱の可能性という解釈が成立し、POSのみ異常であれば、地殻変動または測位誤差の可能性という解釈が成り立つ。

TEC・POSとも異常値が出て始めて、異常地震準備過程の候補として、より詳しく検討する価値があることになる。

算出時間との関りでは、このシステムは、国土地理院が運営管理するGEONETデータ取得してから約10分〜15分後に異常検知結果を表示することができるという。

国土地理院のデータは、10分間を一つの単位として蓄積され、その終了後およそ2分で公開される。京大のシステムは、ダウンロード・測位計算・相関解析を行い、観測した時点から約10~15分後に結果を表示する。

この意味で、準リアルタイム相関解析システムと言っているのだろう。

したがって、仮に地震の40分前から異常が始まれば、理屈の上では、地震の25~30分ほど前に異常を画面に出せることになる。

京都大学の梅野研究室は、昨日の熊本地震について、地震発生前の時刻に電離圏異常が観測記録に現れていたとして、地震発生後に速報続報を公表している。

ただし、これは地震発生前に異常を検出し、「熊本地方で大地震が起きる」と予測・公表したものではない。また、今回公表されたのは、沖縄または鹿児島県山川から京都へ送信された電波の斜入射イオノグラムに現れた異常であり、先に発表されたGEONET準リアルタイム相関解析システムによって、TECとPOSの双方に異常が検出されたという報告ではない。

さらに、公表内容には、この異常から震源地を熊本地方と推定できたことも示されていない。したがって現段階では、「熊本地震を事前に予知した」のではなく、「地震前の観測記録に前兆候補となる電離圏異常があった」ということになる。

このシステムの主要な弱点は、異常を検出しても、それが地震に由来するものかを確定できず、そこから震央・発生時刻・規模を具体的に推定する能力がまだ実証されていない点にある。

ただ、このシステムは、

・GEONETという全国約1300点の高密度観測網を利用できる

・同じGNSS観測データから、地殻のPOSと電離圏のTECという異なる物理量を取得できる

・全国データの相関計算自体は約10秒と軽い

・観測から約10~15分後に結果を表示できる

・過去の東北地方太平洋沖地震・熊本・台湾の大地震で、数十分~数時間前の異常候補が報告されている

・新しい大規模な観測網を一から建設しなくても検証できる

これらの点から見て、準リアルタイム相関解析システムは、大地震の前兆監視システムとしては、かなり有望ではないかと思える。

今後も、このシステムは、注目して行きたい。

ただし、システムは単独で存在するのではない。

その運用体制とセットで存在している。

福島原発事故のとき、地震・津波による電源喪失や通信障害で、原発からERSSへ原子炉データを送れなくなり、結果的にSPEEDIが運用できなかった事例もある。

さらに、避難行動の時間があまりないので、大都市の交通渋滞やパニックを誘発するとして、準リアルタイム相関解析システムのアラートを、政治的な判断で、出さない可能性もある。

つまり、システムが優秀でも、それとセットで、「想定外」でフリーズしてしまわないような、運用体制をきちんと設計しておかないと、システムが役に立たないこともある。

このブログの人気の投稿

往還日誌(341)

一般社会操作論に向けて

往還日誌(385)