往還日誌(354)
鳩の他にも、古代の軟骨魚類――サメ、エイ、ガンギエイなど――は、弱い電場を検出して中枢神経系へ情報を伝える特殊な電気受容器官を持つことが知られている。サメはこの感覚様式を捕食のために利用し、ガンギエイは同種間の信号の検知にも用いている可能性がある。
つまり、サメ、エイ、ガンギエイ、鳩などは、人間の環世界にはない感覚様式である電磁場の検出器を、その環機能として備えているのである。
人間の環世界も、<視覚、聴覚、触覚、臭覚、味覚>の5つ感覚器官からの感覚情報で成立しているとばかり思っていたが、2024年3月29日付『BBC Science Focus』よると、もっと、複雑で精妙であることがわかってきたという。
上記の5感は、「外受容性感覚」と呼ばれ、外界についての情報を運んでくる。
他方、心臓の鼓動、肺が広がる動き、胃が鳴る音など、普段まったく意識していない体内の出来事に反応する受容器もある。これらは伝統的に、もうひとつの感覚「内受容性感覚」としてまとめられている。
さらに、実際には、見たり、聞いたり、嗅いだり、味わったり、触れたりするすべての経験は、身体の受容器からのデータだけでなく、脳による構築によって生み出されているという。
人間の、あるいは他の種の環世界もそうかもしれないが、脳の作用の性質が感覚器の情報以上に重要であるようなのだ。
この『BBC Science Focus』の記事の著者、リサ・フェルドマン・バレット博士はこう述べている。
「脳は、過去の経験、身体の状態、現在の状況に基づいて、『これから何が見えるか』を先に予測します。
そして、その予測と実際の網膜からの感覚データを組み合わせて、あなたが目にする視覚体験を構築するのです。
同様に、手首に指を当てて脈を感じるとき、実際に感じているのは、脳の予測と感覚データが合成されたものです。
あなたは感覚器官で感覚しているのではありません。
あなたは脳で感覚しているのです」。
2024年4月27日からずっと行っている、初期仏教の瞑想、特にヴィパッサナー瞑想は、この脳の機能を正しく調整するうえで、非常に有効な技法だと思える。
脳は、絶えず、暴走し、妄想(特に被害妄想)するので、感覚情報にできるだけ忠実に脳を調整することは、環機能を有効に機能させ、その環世界を澄んだ明晰なものにする。
それは、人間から怒りを遠ざけ、冷静さや平安に、確かに近づけると思う。