往還日誌(337)
■10月5日、日曜日、降ったり止んだり。
早朝に起きて、ルソー『言語起源論』を読む会の準備。その後、読む会。
議論する中で、暗号論の話になったとき、N先生よりカール・ヤスパースが暗号論を書いているとの示唆があった。全く知らなかったので驚いて、午後、中央図書館へ予約本を取りにい行ったときに、ヤスパースの『神(超越者)の暗号』をついでに借りてきた。
ヤスパースの議論は、「超越者の暗号」という観点で、チューリングなどの通常の暗号論が水平的だとすると、ヤスパースのそれは垂直的である。
聖書の言葉を「事実」としてそのまま受け取り、それを根拠に善悪の判断を行う人々が、米国や英国の福音派、キリスト教原理主義者だが、ヤスパースは、聖書の言葉をそのまま「事実」とは受け取らない、また、そのまま信仰の対象ともしない。
ヤスパースは、聖書の言葉を「暗号」として受け取る。
なので、ここには主体的な解読作業が入る。
その解読作業が解読者の実存、つまり生き方を創るするため、倫理学へと開かれる。
言い換えれば、その人がどういう人になるかを暗号解読が規定する。
ヤスパースの暗号論は、倫理学へ結びつく、という点で、水平的な暗号論とは異なり、たいへん、興味深いものである。
聖書を暗号として、解読することは、クリスチャンではないので、あまり機会がないが、故人(古人・古典)のメッセージを、言語や生き方で受け取って、それを主体的に解読していく中で、自分の生き方の方向性が定まっていく、ということは誰にでもあるだろう。
あるいは、自然的存在のメッセージを「暗号」として受け取ることもあるかもしれない。
それを解読する作業は、主に科学者の仕事になるだろうけれども、実は、それは、気候変動のように、市民社会全体の仕事である場合もある。
なので、ヤスパースの暗号論は、突拍子もないものとも言えないのである。
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きのう、ニコに『一般社会操作論』の予備的スケッチを送ったところ、10月3日付で『Frankfurter Allgemeine Zeitung』に掲載された、気候変動に関するエッセイ「天気と私達:信頼と抑圧」が送られてきた。
夕方、読んで感想のメール書く。
彼の気候変動論の斬新さは、自然を、人間のパートナーとして規定し、自然との間に、社会契約を結ぶというもので、ルソーの社会契約論を自然的存在にまで拡大している。
これは、年末に、NYCのRoutledge社から出る彼の『A World of Our Making: Climate, Democracy and Knowledge』を参照したエッセイで、私もこの本の出版を楽しみにしている。
暗号論との関りで述べると、ニコはこう言っている。
「気候は言葉ではなく、洪水、火災、熱波といった兆候で私たちに語りかけます。私たちはこの言語を無視することも、理解することもできます」。
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高市早苗さんが、自民党の新総裁に決定した。
第一回投票も決選投票も、高市さんは、党員票で小泉氏を圧倒している。
議員票では、第一回では小泉氏が、16票も上回ったが、決選投票では、議員票でも高市氏に逆転された。
決選投票結果
高市早苗:議員票 149票 + 都道府県票 36票 = 合計 185票
小泉進次郎:議員票 145票 + 都道府県票 11票 = 合計 156票
これが、現在の高市氏の政治基盤である。党員票は強いが、議員票に145票もアンチがいる。
これは、党内基盤が弱いということだろう。
党内外の政治基盤を固めることが、最初の仕事になるはずである。
連立の相手選びは、公明党の意向ばかりか、アンチ145人の意向も考慮する必要があり、さらに、閣僚と党三役の選任も、この点を考慮しなければならない。
他方、高市内閣は安倍政権をモデルにするはずなので、旧安倍派や日本会議、統一教会など、安倍政権を支えた極右政治勢力とカルト宗教団体が活性化するだろうと思う。
まず、高市さんの「過去の行動」と、過去と現在の発言の「社会的機能・社会的効果」を観てみたいと思っている。
その中でも、注目しているのが、総理就任後の靖国参拝と表現の自由への介入、連立の形式である。
こうした行動における自由度も、高市政権の党内外の政治基盤に規定されるはずである。