Untitled




untitled

 

 

雨は

花を過去へと

降り込める

時間は

雨の音とともにあり

花の香りは過去から

香つてくる

(八重櫻の向こうに

いにしへの五重塔が見える

──果たして

あれは

宇多天皇だつたのだろうか?

ひとりの観光客が

デッキに座つて

枯山水の庭を見つめてゐる

その南庭の片隅では

存在を

消して

痩せて

敏捷な植木職人が

小石の隙間の草を

手早く抜いてゐる

(私に彼は見えてゐるが、見えてゐない

(宇多天皇に、彼は見えてゐない

(伊豆半島南端の部落では

そのとき

天皇を知つてゐる者はゐなかつた…

浜辺に打ち寄せる天草、天草、天草

あわび、サザエ、トコブシ

月のない晩

伊勢海老が砂地へ出てくる…

(海たちは陽気に笑つて

天地の時間は

どこまでも深い







このブログの人気の投稿

往還日誌(316)

往還日誌(310)

一般社会操作論に向けて