往還日誌(323)
■8月24日、日曜日、晴れ。
17日に、若宮へ戻って以降、40℃近い日が続いている。
みんみん蟬と法師蟬がよく鳴いている。
気象学による地球温暖化の説明が正しければ、11月、12月くらいまで、夏が続くような異常気象が、今後、ノーマルになる可能性が高い。しかも、気温は、今後、加速的に暑くなり、それにともなって、集中豪雨やドカ雪が増えるはずである。
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今朝は、ヘーゲル『精神現象学』を原典で読む会。
ヘーゲルを読みながら、何人かで議論する時間はとても愉しい。
ヘーゲルの「承認論」は、自己否定を含むアクチュアルなものだが、フラットな相互承認を目指す「承認論」は、階層化運動を伴う「差別論」と、常に、ペアで働いており、これまでも、これからも、差別論の方が強力だと私は観ている。
差別論は、階層化を前提として内外に収奪対象を作り出す資本主義と親和性が高いからだ。
差別論は、ウクライナのロシア系住民の虐殺・弾圧・差別に見られるように、戦争さえ引き起こす。
ラブロフ外相が、米露会談とワシントン会議の受け止めを聞かれたロシアのテレビ局のインタビューで答えた7つの論点のうち、3つまでが、ウクライナにおけるロシア系住民の人権問題だった。
この意味では、ヘーゲルの「承認論」を、社会制度や国連の意思決定システムに実装するという発想があってもいい。
社会における言語の価値づけの違いなど、文化的な違いもあるから、機械的な実装では、藪蛇になる可能性もあるが、社会の差別化を抑制する働きが期待できるのではないか。
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その後、ルカーチの連載、第22回の仕上げ。
今回も訳注が多くなり、全部で8つになった。
哲学的な議論ほど、具体例を考えることが大切で、これによって、理解が格段に深まる。
これは、社会基礎論であると同時に、科学基礎論なので興味が尽きない。
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夕方、買い物に行き、家族に夕食を作る。キットを使用したので、速くできた。
夜、太宰の『右大臣実朝』を読む。三代将軍実朝までは、京都の力が文化的にも政治的にも鎌倉に及んでいたが、支配権力の質的な変化が起きるのは、1221年の承久の乱で、北条義時率いる鎌倉軍が、後鳥羽上皇の京都軍に大勝して、上皇を「罪人」として、隠岐へ配流して以降だろう。