往還日誌(321)


■8月13日、水曜日、雲の多い晴れ、12時ごろ、激しい雨、その後、また雲の多い晴れ。

11月18日に、Gooブログが閉鎖されるため、これまでに書いた3つのブログの6448記事を、Hatenaブログへ移管した。当面、閲覧は、私だけとして、資料倉庫として使用の予定。

いずれ、第1句集や3つの社会哲学の仕事を本にまとめるときの参考資料とする。

8月10日の日曜日に放送された「NHKスペシャル イーロン・マスク “アメリカ改革”の深層」を視聴した。

たいへん面白かった。いろいろ考えさせる。マスクおよびその周辺のテックライトと呼ばれる人々、言い換えれば、テクノロジー教徒の持つ異様な楽観性と人間存在の薄さの、危うさをまず感じる。

しかし、AIの社会実装の流れは止まらないと思う。特に、少子高齢化の激しい日本や中国、韓国などの東アジアでは。つまり、テクノロジー教、AI教が広がる条件はあっても、なくなる条件は見当たらない。

ただ、随所に、恐らくそうだろうという知見はある。たとえば、AIの官僚システムへの導入によって、統治形態が変化するといったことは実際に起きるだろうし、

もっとも、根本的な問題は、AIの体現する効率化と民主主義はトレードオフの関係にある、という知見だろう。つまり両立しない。

テックライトの教祖、カーティス・ヤービンが、この番組で指摘した洞察――我々が「民主主義」と呼んでいるシステムは、大学に典型的なように、知識をベースにした権威主義システムになっている――は、当たっている。

しかも、それは、特定の利権と結びついて、「国家利権村」を形成している。米国の民主党や日本の自民党を見ているとよくわかる。

ルソーが想定した民主主主義や国家は、官僚制の肥大や軍産複合体・メディア複合体などの国家利権村の拡大を想定していなかった。

これは、18世紀と比べて現代の国家の規模が格段に大きくなったことや、その複雑性が格段に増したこと、そして、なにより、民主主義が資本主義にたえず汚染されきたからだろう。

ここから、ヤービンは、効率化と民主主義のトレードオフ関係に代わる、効率化と君主制の相乗関係を説いている。このモデルは、マスクの企業の統治形態だろうと思う。

そもそも、マスクやヤービンが当たり前のように前提している「効率化の原理」とは、「資本主義の原理」に他ならず、要するに、効率よく、金を儲けることに、すべての目的は、収れんしていく。

マスクのアメリカ改革とは、結局、一部の人間にますます、金と権力が集中できるように、システムを変革しようということだと思う。

たいへん、危険だが、現代の民主主義システムが持っている本質的な問題点を指摘しているところは、参考になる。


このところ、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』をよく観るのだが、清盛が後白河法皇を幽閉して、源平合戦があり、鎌倉幕府が成立していく歴史を見ていると、平家の政権から、1945年8月に敗戦するまで、権力の根拠という点で見ると、内外に対する軍事力だったということは言えるように思う。

この意味で、道長・頼通の摂関政治の終焉から、戦後まで、約877年間が「軍事政権」だったと考えることができる。日本とされる社会空間がすべて、単一の軍事政権で統治できていたわけではないにしても、その様々な影響は、周辺部に対しても、相当大きかったのではないかだろうか。

戦後80年間は、多くの欺瞞と偽善を内包しながらも、権力の根拠は、軍事力ではなく、政党の議席の数だった。これを可能にした条件は、戦争に負けてアメリカの保護国になったことだろう。

自民党の憲法草案や参政党のそれのように、権力の根拠を、天皇や軍事力に戻すことは、アメリカの保護国という現実とぶつかるはずなのだが、自民党旧安倍派も参政党も、親米・親イスラエルである。

これは、Usraeli指揮の元での、見せかけの主権を続けることが、自民党にも参政党にも大きな「得」だということを示している。

このように、軍事政権の方が、圧倒的に歴史が長く、その文化的・社会的・精神的な基盤が整っているため――これが、社会全体の持つ民族性や出自による差別性を培養している――、民主主義の民主化をたえず、行わないと、「緊急事態条項」のような、このDNAを持った諸制度に飲み込まれる危険性があるように感じる。

当然のことながら、軍産学複合体・メディア複合体・医薬複合体・資源エネルギー複合体など、国家利権村と結びつく、「リベラルの欺瞞性と危険性」も、同時に存在している。


京都の花屋には、数日前から鶏頭が出てゐる。鶏頭には、さまざまな種類と色があり、なかなか楽しい。根岸の子規庵で種をいただいてきて育てた、あの有名な鶏頭が、イメージしていたものとまったく違っていて、たいへん驚いたことがある。それはそれで可憐で良かったのだが。







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