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8月, 2025の投稿を表示しています

一日一句(5781)

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  佳き夢のめざめはしづか法師蟬

往還日誌(324)

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  ■8月30日、土曜日、晴れ。 京都へ戻る途中に、途中下車して、豊田市美術館へ行ってきた。 モネ展を観るのが目的だった。 たいへんいい展覧会で、いい気分転換になった。 モネは73歳で白内障の診断を受けて、83歳で右目の手術を受けている。 亡くなったのが86歳である。 今なら、白内障の手術は日帰りでできる確度の高い手術だが、モネが10年も手術をしなかったのは、手術によって失明を恐れたからだった。 83歳のときの手術は成功したが、晩年の10年以上も、色彩の正確な識別ができない状態だった。 この身体条件やそれに伴う心理状態が絵に現れている。 それは、かたちの秩序を生成の混沌へ戻すような、始原と終焉をつないだような感じを受けた。 モネ晩年の作品を、抽象画の源流と見る見方もあるのは、わかる気がする。 モネが睡蓮の池を造成するのは、53歳のときで、このとき、セーヌの支流から、その池に水を引こうとして、地元の住民に反対に遭っている。 この住民の反対は先鋭的なものにはならずに、時間ともに、認められていく。 これも、面白いと思った。なんとなく、認められてしまうのである。 その裏の事情もあったに違いないが、それは詳しく語られていない。 モネが買い取って、睡蓮の池などを造成した土地の図面も展示されていたが、これは、画家の、たんなるアトリエ付きの邸宅を完全に越えている。 今でいう、公園造成工事のようなもので、敷地自体が広大で花壇や植物も豊富に植えられている。 今、このノルマンディーのジヴェルニーのモネの邸宅は、 修復工事を経て、1980年以降、一般公開されている。 モネで興味深いと思ったのは、国家との一体感情である。 1918年11月12日、第一次大戦休戦の翌日、友人で当時の首相だったクレマンソーに手紙を出して、国家に装飾画を寄贈したいと申し出ている。 1920年に、12点の睡蓮の装飾パネルをフランス国家に寄贈することに合意して、専用の展示館の建設に着手するが、資金不足て頓挫して、現在のオランジェリー美術館での展示に変更となる。 モネの、この睡蓮の装飾画の寄贈は、これで、国家の戦争に貢献するつもりだった、ということなのである。 モネの息子は、第一次大戦で戦死している。ほかにも、多くの知り合いが命をかけて、フランス国家のために戦っている時に、自分は絵などを描いていて、いいのだろうか...

一日一句(5780)

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  丹田に力を入るる炎暑かな

一日一句(5779)

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  実朝の高き聲する秋の磯

一日一句(5778)

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  新豆腐家族でかけてがらんかな

一日一句(5777)

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  月も日もきれいに上がる西瓜かな

一日一句(5776)

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  亡きひとと聴くはつくつく法師かな

一日一句(5775)

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  みんみんや天の彼方に雲起こり

一日一句(5774)

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  風鈴や道に散らばる音のいろ

往還日誌(323)

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■8月24日、日曜日、晴れ。 17日に、若宮へ戻って以降、40℃近い日が続いている。 みんみん蟬と法師蟬がよく鳴いている。 気象学による地球温暖化の説明が正しければ、11月、12月くらいまで、夏が続くような異常気象が、今後、ノーマルになる可能性が高い。しかも、気温は、今後、加速的に暑くなり、それにともなって、集中豪雨やドカ雪が増えるはずである。 ★ 今朝は、ヘーゲル『精神現象学』を原典で読む会。 ヘーゲルを読みながら、何人かで議論する時間はとても愉しい。 ヘーゲルの「承認論」は、自己否定を含むアクチュアルなものだが、フラットな相互承認を目指す「承認論」は、階層化運動を伴う「差別論」と、常に、ペアで働いており、これまでも、これからも、差別論の方が強力だと私は観ている。 差別論は、階層化を前提として内外に収奪対象を作り出す資本主義と親和性が高いからだ。 差別論は、ウクライナのロシア系住民の虐殺・弾圧・差別に見られるように、戦争さえ引き起こす。 ラブロフ外相が、米露会談とワシントン会議の受け止めを聞かれたロシアのテレビ局のインタビューで答えた7つの論点のうち、3つまでが、ウクライナにおけるロシア系住民の人権問題だった。 この意味では、ヘーゲルの「承認論」を、社会制度や国連の意思決定システムに実装するという発想があってもいい。 社会における言語の価値づけの違いなど、文化的な違いもあるから、機械的な実装では、藪蛇になる可能性もあるが、社会の差別化を抑制する働きが期待できるのではないか。 ★ その後、ルカーチの連載、第22回の仕上げ。 今回も訳注が多くなり、全部で8つになった。 哲学的な議論ほど、具体例を考えることが大切で、これによって、理解が格段に深まる。 これは、社会基礎論であると同時に、科学基礎論なので興味が尽きない。 ★ 夕方、買い物に行き、家族に夕食を作る。キットを使用したので、速くできた。 夜、太宰の『右大臣実朝』を読む。三代将軍実朝までは、京都の力が文化的にも政治的にも鎌倉に及んでいたが、支配権力の質的な変化が起きるのは、1221年の承久の乱で、北条義時率いる鎌倉軍が、後鳥羽上皇の京都軍に大勝して、上皇を「罪人」として、隠岐へ配流して以降だろう。

一日一句(5773)

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  生ゴミをどさりと置くや夜の秋

一日一句(5772)

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  秋蟬にすべては遠くなりにけり

往還日誌(322)

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  ■8月20日、水曜日、晴れ。 19日に気象庁が発表した向こう三ヶ月の予報では、11月まで高温が続く。1年の半分が夏になった。もう半分で、冬と春を分けあっている。 若宮へ戻るとき、『異常気象の未来予測』を読みながら帰って来た。 この本のデータを見ると、2010年以降、「冷夏」というものが消滅している。 この15年、特に、異常気象が加速していることがわかる。 この猛暑の原因は、偏西風の蛇行が、激しくなり、そこに、太平洋高気圧が留まることで起きている。 偏西風は、流れが速いと蛇行せず、まっすぐに進み、流れが遅いと、蛇行が激しくなる。 偏西風の流れの速さと遅さは、南北の温度差に規定される。 南北の温度差が大きければ偏西風は速くなり、温度差が小さければ遅くなる。 要するに、北極圏の温度と赤道付近の温度の差が、地球温暖化の影響で小さくなったために、偏西風の蛇行の速度が遅くなっているのだ。 南北の温度差は、今後、加速的に小さくなると予想される。 というのは、地球上でもっとも温度上昇が大きい地域が北極圏だからである。 北極圏の雪と氷は、白いので、これまで太陽光を反射してきたが、これが、地球温暖化で溶け始めると、太陽光を反射できなくなり、他の地域よりも温暖化が加速しやすくなる。 北極圏は、海洋と永久凍土からなるが、永久凍土が溶けると、そこに封じ込められていたメタンガスが大気に放出される。 メタンガスは、二酸化炭素よりも圧倒的に温室効果が高く、これが放出されると、地球温暖化は、その加速度が一気に高まり、手の打ちようがないのではないか。 地球温暖化で北極圏の開発がしやすくなった、などと、中国に次ぐ世界第2位の温室効果ガスの排出国であるアメリカのトランプ政権は言っているが、トランプ氏は79歳で前頭側頭型認知症も出ていて、もう先はないが、今後の世代は、灼熱地獄になる。 それは、食料問題・医療問題と直結し、働き方と直結し、格差の問題とも直結する。 ★ きょうも、終日、仕事。 あすから、日曜日まで、お盆休みとなったので、締め切りが過ぎているルカーチと、ニコの新著の仕事に専念の予定。

一日一句(5771)

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  ロシア語は座敷にしづか秋の風

一日一句(5770)

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  睡蓮や水は彩なす日の光

一日一句(5769)

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  石段の石に躓く敗戦忌

一日一句(5768)

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  石庭の石の白さや敗戦忌

一日一句(5767)

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  睡蓮の水面に映るかの世かな

一日一句(5766)

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  茶碗割るその後の秋の深さかな

一日一句(5765)

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  風見えて柱も細き葦戸かな