往還日誌(312)
■6月28日、晴れ。
朝一番で、きのうの夜、洗濯したものをコインランドリーへ持っていき乾燥機にかける。
その後、食事。
コインランドリーへ取りに行き、掃除、毛布を干す。
心身調整と歩く瞑想。
午後から、神戸へ向かう。
高速神戸駅のアーケード街の喫茶店で、友人たちに詩集を渡す。
3時間くらいおしゃべり。
京都からJR神戸駅まで、新快速で約1時間。
行きも帰りもケインズの『確率論』を読んだが、行きも帰りも、途中で寝てしまった。
日本語の文章構造と英語のそれとは異なるので、翻訳が悪いとは言わないが、元の英語の文章の方が、明晰なのではないかと、思った。
一文が長く、関係節が多そうなのは、わかるので。
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神戸に着いたのが少し早かったので、神戸駅の駅ビルに入っていた「上等カレー」というのを食べてみた。
カツカレーを頼んだのだが、神戸では、あるいは、その店では、「とんかつカレー」と呼んでいた。ふいを突かれた。確かに、とんかつカレーが正式であろう。
カツカレーは省略名である。
たいへん大きな楕円の皿の中央に、ご飯が盛られて、その上に、とんかつが載り、その上に、カレーがたっぷりかかっている。
知らない土地で空腹になったとき、なにを食べるべきか?
私はカレーと決めている。ほぼ外れがない。
このカレーで感心したのは、このとんかつの切り方だった。通常、揚がったカツを包丁で横に切っていく。店によっては、かなり細長くなる。
「上等カレー」は、最後に、縦に切るのである。この結果、カツは完全に一口大となる。
カレーはスプーンで食べるのが相場なので、細長いカツよりも一口大の方が明らかに食べやすい。細長いカツカレーのカツは、スプーンから落ちてしまうこともある。
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ついでに、思い出したのだが、これは京都の話だが、先日、出町商店街近くの今出川通を歩いている時、職人が、工事で出たと思われる、古い長方形の石を運んできたところに出会った。
作業や労働の仕方というのに関心があるので、しばらく、観ていた。
後から、年配の職人が手ぶらで来て、この石について、この石どないするかやな、というようなことを言っている。
先に石を運んできて、軽トラックの前に、その石を運び置いた、やや若い方の職人が、運転席に戻って、手袋をして、2人で、石を持ち上げて、トラックの荷台に移すようなのである。
2人で重い石をもちあげて、年寄の職人が何か言うたとき、若い方の職人――こっちが棟梁らしいが、こう言ったのである。
「先、預けな」
これを関東弁に訳すと「先に、(荷台に)置かないと」となる。
つまり、年寄をかばう言葉なのである。
重いから、先に手を放せ、ということである。
私が、唸ったのは、この「預けな」という言葉の使い方だった。
トラックの荷台に石を置くことを、「預ける」と表現している。
トラックに石を預ける、という意味の表現は、関東では、あまり聞かないと思うが、この場合、いかにもぴったりなので、印象に強く残ったのである。
「先、預けな」だからいいので、「先に預けないと(ダメだよ)」では、直線的過ぎて、言葉の襞がない。